Deterioration 劣化 (連載第487回)

 寝室の蛍光灯(fluorescent light)のリモコン操作が効かなくなった。考えてみたら新婚当初に買ってから四半世紀余りになる。よく持ったものだが、やはり老朽化(age deterioration, 経年劣化)による故障だろう。製造元ではもう修理対応していないようなのでやむなく買い替えることにした。家内がそのデザインを気に入っていたこともあって捨てるに忍びなく、壁の電源スイッチで入り切り(turn on/off the power switch)すればまだ使えるので納戸に移設した。

 一方、この種のインバーター式蛍光灯が登場する前から使ってきたグロー式の古い蛍光灯は使用頻度が低いのが幸いして今も全機がつつがなく稼働している。昔ながらの直管型蛍光管やグローランプ(点灯管、グロー管)は百円ショップでも買えるし、もう製造されていない専用の交換部品(replacement parts)も通販サイトで探せば流通在庫品がまだ手に入る。蛍光管とグロー管を数年に一度くらい交換すれば半永久的に使えそうだ。

 シーリングライトはすでに市販品のほとんどがLED式に置き換わっているのでその中から選択せざるを得ないが、通販サイトのユーザーレビューを見るとLED照明はメーカーによってチラつき(flicker)が多いとか、思ったより暗いといった不評が後を絶たない。ここは慎重を期して貧乏なわが家にはやや高価な国産メーカー品(domestic brand products)を選んだところ、以前の蛍光灯と照度や光色がほぼ変わらない安定した灯りを再現できた。

 思い起こせば蛍光灯にしても、その昔はチラつきがあったし、よく切れた。品質(quality)や耐用年数(useful life years)が安定したのは技術が成熟した(mature)後年のことだった。LED照明器具も初の製品化から幾年もの市場での試練を経てようやく私なども満足し得る製品が供給されるようになってきた。

 ひと頃は家電品の供給をほぼ独占していた国内メーカーの一部は市場から姿を消し、近頃では低価格帯製品(low-end products)の多くが某隣国製だ。まともな製品もあるにはあるが、数カ月もしないうちに故障する粗悪品(inferior products)も多いと聞く。低評価のレビューを読むと、異常に高温になったとか、発火したといった危険を訴える苦情(complaint)もまま見かける。

 家電品に限った話ではないが、新しい技術や製品が良いとは限らない。数ある中には逆に退化したものもある。何であれ外れを引かないように、的確な情報収集と判断に意を注ぎたい。

(『財界』2021年10月20日号掲載)

【注】本稿で取り上げた英語表現については筆者ブログに解説記事を載せてあるのでクリックしてご参照ください。→ age deterioration 【経年劣化、老朽化】


※掲載日:2021年10月25日
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