Just in case こんなこともあろうかと (連載第495回)

 スマホ(smartphone)のように面倒なものは金輪際、買いたくないなどとほざいていた守旧派の私だが、災害等による長時間の停電によりパソコンやネット接続が使えない緊急事態に備えて(in case of emergency)、この齢になって初めて自分用のスマホを購入した。今年から第3世代携帯電話、俗に言うガラケーのサービスを終了する通信会社(carrier)もあって、私のも2年後には使えなくなるというので、いずれにせよいつかは導入せざるを得ない。

 幸い、MVNO(mobile virtual network operator, 仮想移動体通信事業者)が提供するいわゆる格安スマホなら今や月に千円も払えば3GBほどの通信データ量を確保できる。メールの送受信、ネットで調べものをする程度ならそれで十分だ。

 スマホの情報通信機能を活かすには、買ってそのまま持っているだけでは意味が無い。音声電話とカメラ機能くらいは使えるが、そのくらいはガラケーでもできる。目的・用途に応じてアプリ(app)をインストール(install)し、いざという時に備えて使えるように設定しておかねばならない。その設定が実に面倒だというぼやきは前回書いた。

 充電式でwi-fi接続環境が無くても通信できるスマホの真価は、自宅の接続環境が利用できない状況で試して初めて実感した。パソコンで作成した文書やメールはテザリング(tethering)、つまりスマホでネットに接続してやれば送れる。スマホのメーラーやブラウザーをパソコンのそれと連動させればいつもの連絡先やブックマークをいつでも使える。パソコンでできることはたいがいできる。

 いやそれどころか、この小さな装置(gadget)は、私の古いパソコンではできないことまでやれる。前にも書いた監視カメラの遠隔操作・監視アプリは多くの安心をもたらした。緊急ボタンを押せば自身の現在位置を直ちにメールで伝えてくれる防災防犯用アプリも導入した。停電等で通信が途絶する前に家族に安否を知らせることができる。内蔵カメラでテレビ電話もやろうと思えばできる。さすがにデータ通信量は食うが、もともとテレビ電話なんか好きではない。

 残念ながら、私はスマホを使って楽しいと思ったことは今のところ無い。若い人たちのようにゲームはやらないし、自分が踊る映像を人に見せる趣味も無い。通信料金も手頃になったことだし、必要になったから買った、ただそれだけだ。

(『財界』2022年2月22日号掲載)


※掲載日:2022年2月22日
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